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10年後の変動金利を試算する方法は?
ずばりキーになるのは店頭金利です。店頭金利は、固定期間ごとに景気の先行きや金融政策の変化を織り込みつつ、経営スタンスを反映して設定されていると考えられるからです。
店頭金利を分析することで、それぞれの銀行の先行きの見通しを計算できます。
これは、「インプライド・フォワードレート」と呼ばれるもので、「長期の固定金利が複数設定されていれば、将来の金利が推計できる」という考え方です。
次の項目は、主要な銀行12銀行について、インプライド・フォワードレートを計算してみました。銀行は、以下の銀行です。
・大手銀行=みずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行、三菱UFJ銀行
・ネット銀行など=イオン銀行、SBI新生銀行、住信SBIネット銀行、ソニー銀行、楽天銀行、りそな銀行、auじぶん銀行、PayPay銀行
今回は、銀行ごとに金利がどのように推移すると予測しているかを把握するため、各行のサイトに掲載されている固定期間別の店頭基準金利(2023年11月現在)をもとに、変動金利(基準)のインプライド・フォワードレートを計算します。変動金利(基準金利)を算出したら、それぞれの銀行の「金利最優遇幅」を差し引いて、変動金利(適用金利)を算出します。
10年後の変動金利を試算(2024年10月)
銀行名 | 10年後の変動金利(試算) |
---|---|
三井住友銀行 | 2.255% |
楽天銀行 | 2.140% |
イオン銀行 | 2.089% |
三井住友信託銀行 | 1.921% |
りそな銀行 | 1.898% |
ソニー銀行 | 1.552% |
みずほ銀行 | 1.550% |
auじぶん銀行 | 1.448% |
SBI新生銀行 | 1.176% |
三菱UFJ銀行 | 1.174% |
PayPay銀行 | 1.140% |
住信SBIネット銀行 | 1.076% |
10年後の変動金利を試算した結果、金利が最も低いのは、住信SBIネット銀行の1.076%で、金利が最も高いのは、三井住友銀行の2.255%。12銀行の平均値は1.619%です
12銀行は変動金利の上昇時期を何年以内と予測しているのか?
ゼロ金利解除後、日銀は政策金利を0.25%まで引き上げましたが、10月時点では、大手銀行の住宅ローン変動金利は0.15%程度しか引き上げていません。
これまで銀行は積極的に変動金利を引き下げてきましたから、金利の引き上げには慎重になっているようです。今後は周りの銀行の動きを見ながら、徐々に金利を引き上げていくのではないでしょうか?
短期金利(政策金利)は2%~3%まで上昇する可能性がある
現在、市場関係者や日銀のレポートでは、中立金利が1.0%くらいと見ている人もいるようですが、政策決定会合の議事録を見ると、2.0%後半と考えている委員が多いようです。
ということは+1%が変動金利の基準金利となりますので、基準金利が3~4%になる可能性が高いという事になります。
変動金利は何年以内に1.0%上昇すると考えているのか?
政策金利が1.0%になるということは、変動金利が1.0%上昇するということです(銀行にもよりますが)。その時期を、12銀行が何年以内に予想しているのかを試算した結果は以下のとおりです。
時期 | 銀行名 |
---|---|
2年以内 | 三菱UFJ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行、りそな銀行 |
3~7年以内 | みずほ銀行、ソニー銀行、イオン銀行、楽天銀行 |
8~10年以内 | auじぶん銀行 |
11~15年以内 | 住信SBIネット銀行、PayPay銀行、SBI新生銀行 |
試算の結果、みずほ銀行をはじめ、12銀行中8行が7年以内(うち4行は2年以内)に変動金利が1.0%上昇すると予想しているようです。
金利が1%上がるとどうなるの?
仮に4,000万円(物件価格3,740万円+諸費用260万円(内仲介手数料約130万円)の合計)を下記条件で借入し、10年後(11年目に支払から)に1%金利が上昇した場合の試算です
・金利種別:変動金利(元利均等方式)
・借入時金利:0.4%(年利)11年目以降1.4%(年利)
・借入期間:35年
・ボーナス時:支払無し
・繰上げ返済の有無:繰上げ返済はしない
当初10年は月々102,076円の支払い、11年目以降は月々115,164円の支払いとなります。
無理のない資金計画で購入する事が大切。
上記の通り、金利が1%上昇するだけで月々約13,000円も支払額が増加します。
これが、もし2%上がった場合は、月々129,250円となり、当初よりも約27,000円も支払額が増加します。
仮に自宅の購入時お子様の年齢が3・4歳の場合10年後であれば13・14歳となりますし、高校入学等でお金が必要な時期に月々の支払いが増えるといった可能性も考えられます。
仲介手数料無料の分、借入が少ない場合は?
物件の建物価格を考えず仲介手数料を計算しますと、3,740万円×3%+6万円と消費税の合計額が仲介手数料となりますので約130万円程度が仲介手数料となります。
この分借入を行わない場合は、上記試算の借入額が4,000万円から3,870万円となります。
当初10年は月々98,758円の支払い、11年目以降は月々111,422円の支払い(1%上昇)
当初10年は月々98,758円の支払い、11年目以降は月々125,049円の支払い(2%上昇)
と金利上昇時には4,000円程度月々の支払額に差が出てまいります。
仮に当初10年の差額3,318円を10年間貯蓄し約40万円を繰上げ返済を行った場合、11年目の支払額は
1%上昇の場合は月々111,066円、2%上昇の場合は124,650円と約400円程さらに下がります。
残念ながら
不動産会社の営業マンの大半が「今売れればいい」「先のことは予測でしかないから伝えない(伝える必要がない)」「売ったらおしまい」といった考えの人間が多いのが現状です。
特に注意すべきなのは「マンションをメインとして取り扱っている不動産会社」です。
こちらのコラムでも書きましたが、マンションは住宅ローンとは別に【管理費】【修繕積立金】が必ず掛かってまいります。最低賃金を1,500円以上に、社会保険適用拡大など人件費に関する企業負担が増えることは周知の事実でありそれに伴って【管理費】【修繕積立金】の額も上がることは必須といえます。
住宅ローンの上昇に伴う返済額の上昇+人件費アップに伴う月額コストの上昇
は将来設計に組み込まないと近い将来自宅を維持出来ないといった事も考えられます。
このあたりの説明を出来ない営業マンが多すぎるのが現状です。
失敗しない物件探しとは?
まとめとなりますが
①:過去・現在の状況によって推測ではなくしっかりしたエビデンスに基づいて未来を推測する。
②:推測したデータの最悪な状況を踏まえ現状維持とした際、自宅を維持できるか考える。
③:当り前と思っている事(仲介手数料は支払うもの等)が当り前ではないという事を再認識する。
④:申込までは、不動産会社は1社に絞らない(他社がポータルサイトに掲載している物件のほぼ全ての物件はどの不動産会社でも取り扱い可能です)
以上を踏まえ物件探しをされた方が良いと思います。