
2022年の税制改正により、住宅ローン減税(控除)は2025年の12月31日まで延長されました。
「2025年までなら、まだ少し時間がある」と思った人もおられると思います。
しかし、住宅ローン減税の控除額は入居時期で変わるため、2024年以降に入居すると控除額が引下げられます。また、省エネ基準などに適合していない一般の新築住宅については、建築確認や建築時期によっては住宅ローン減税の対象外になります。
2023年現在住宅購入を考えている人は、入居や建築確認のタイミングによって控除内容が不利になる可能性が御座いますので注意しましょう。今回は、住宅ローン減税の改正内容と注意点、住宅の買い時について解説します。
2022年に改正された住宅ローン減税をおさらい
まずは、2022年に改正された住宅ローン減税の内容をおさらいしましょう。
<【2023年】住宅ローン減税の概要>
- 控除率:一律0.7%(改正前:1%)
- 所得要件:原則、合計所得金額2,000万円以下※特例居住用家屋は所得金額1,000万円以下
- 床面積要件:原則、50㎡以上 ※特例居住用家屋は床面積要件が40㎡以上50㎡未満
新築戸建ての場合
住宅種別 (控除期間) | 環境性能による住宅の分類 | 2022-2023年入居 の借入限度額 (最大控除額) | 2024年-2025年入居 の借入限度額 (最大控除額) |
新築住宅 13年間 | 1.長期優良住宅・認定低炭素住宅 | 5,000万円 (455万円) | 4,500万円 (410万円) |
新築住宅 13年間 | 2.ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 (410万円) | 3,500万円 (319万円) |
新築住宅 13年間 | 3.省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 (364万円) | 3,000万円 (273万円) |
2024年以降 は10年間 | 4.その他の住宅 | 3,000万円 (273万円) | ・2,000万円(140万円) ・※所定の条件を満たさなければ対象外 |
※「4.その他の住宅」については、2023年末までに新築の建築確認を受けているか、2024年6月30日までに建築されている場合のみ2024年以降も10年間住宅ローン減税の対象になる。それ以外の「4.その他の住宅」については、2024年以降は住宅ローン減税の対象外となります。
出典:国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
2022年に行われた税制改正では、住宅ローン減税の控除率が1%から0.7%に引き下げられたことが大きな話題となりました。しかし税制改正による変更点は、控除率だけではございません。
新築住宅の場合、入居年が2024年以降になると最大控除額が引き下げられます。新築住宅の中でも省エネ基準などに適合しない「その他の住宅」については、2024年以降は所定の条件を満たす住宅しか住宅ローン減税を受けられません。 これから新築住宅購入・建築を考えている人は、こうした住宅ごとの違いを考慮したうえで買い時を考える必要があります。
新築戸建ては2024年以降の入居になると控除額が大きく引下げられる

まず、2024年以降はどの新築住宅であっても住宅ローン減税の最大控除額が引き下げられます。最大控除額とは、住宅ローン減税によって軽減される所得税・住民税の最大額のこと。たとえば2023年中に購入・建築契約をしても、入居が2024年以降になると、減税される金額が少なくなってしまうということです。
次に気を付けたいポイントは、新築住宅で「その他の住宅」に該当する場合です。以下で詳しく説明いたします。
特に注意したい「その他住宅」とは
「その他の住宅」とは、長期優良住宅、認定低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅に該当しない、その他の一般住宅を指します。 マンションでも戸建てでも、購入・建築する住宅が「その他の住宅」に該当する場合、2024年以降は住宅ローン減税の内容が以下のように変わります。
<「その他の住宅」の変更点(2024年以降)>
- 住宅ローン減税の適用要件:「2023年12月31日までに建築確認を受けている」か「2024年6月30日までに建築されたもの」のみ対象になる
- 借入限度額:3,000万円から2,000万円に引き下げられる
- 控除期間:13年から10年になる
特に気をつけたいのが適用要件です。建築確認が2024年以降になる、あるいは2024年6月30日以降の建築になってしまうと、住宅ローン減税そのものが対象外になります。
2026年以降の住宅ローン減税はどうなる?

2023年現在の住宅ローン減税制度は、2025年の12月31日までとなっています。 2026年以降は延長されるのか、内容が改正されるのかどうかは公表されていないため、現時点では今後の制度動向はわかりません。 とはいえ、住宅ローン減税制度自体は昭和47年から始まり、平成、令和へと制度の内容を変えながら長期的に継続してきた制度です。日本の基軸産業の建築業を支える住宅ローン減税制度が2026年以降に全くなくなるのは現実的ではありません。
ただし、2022年の税制改正の背景には、住宅ローン控除の金額よりも住宅ローン金利のほうが低いという「利ざや」問題がありました。年1%から年0.7%に引き下げられた控除率については、再び上がる可能性は低いでしょう。 したがって、住宅ローン減税制度は今後延長されても、今より内容が良くなるという期待はあまりできないと思われます。将来的に住宅購入を考えている人は、いつか内容が良くなることを期待して購入時期をずらすよりも、現状の制度で控除をうまく活用する方法を考えましょう。 住宅ローン控除の適用は「購入時期」ではなく「入居時期」によって決まります。住宅は買ってもすぐに住めるわけではないため、いつか購入を考えているなら早めに動き出すことをおすすめします。